VHL病の症状と治療
網膜の血管腫
眼の構造はカメラにたとえられます。レンズに相当する部分は眼球では角膜や水晶体です。フィルムに相当する部分が網膜です(図. 視覚の成立)。VHL病の眼では、網膜に障害をみとめます、つまりフィルムに傷がついている状態ですので、カメラで写真をきれいに撮ることができない状態を考えていただければと思います。網膜にはたくさんの血管が走っていますが、VHL病患者さんの眼には網膜血管の中でも、毛細血管に血管芽腫と呼ばれる血管腫ができます。この血管腫は血管の壁がもろいため、血液の中の液性の成分が漏れ出る(滲斑と呼びます)、場合によっては赤血球などの血液細胞まで漏れ出ることにより出血に至る場合もあります。そのため、網膜が障害され、その部分の網膜がフィルムとしての機能を果たせなくなり、みえにくくなります。
網膜の血管は視神経が眼球につながる部分(視神経乳頭と呼びます)よりはじまります。(図.網膜部位と錐体細胞と杆体細胞)に示してありますように、網膜の血管は視神経乳頭を中心にそのまわりにります。視神経乳頭のやや耳側に黄斑部と呼ばれる部分があります。この部分みた場合、網膜のど真ん中に相当します。ごごには維体細胞と呼ばれる視力や色の感別に重細胞が密集しています。黄斑部からはずれると誰体細胞はほとんどなく、杆判別する細胞がほとんどを占めるようになります、すなわち、物をみるいう観点からは黄斑部がきわめて重要になります。
VHL病の網膜血管腫では、血管腫がどこに存在するのかにより、視力経過が大きな影響を受けます。網膜管腫の場所を考えるうえで、黄斑部や視神経乳頭を含む眼球のど真ん中に近い部分を傍視神経乳頭領域、それより外側の部分を周辺部と呼びます(図.眼底)。傍視神経乳頭領域に血管腫が存在すると視力が低下したり、物が歪んでみえたり、かすんでみえたりします。周辺部に血管腫が存在する場合、患者さんは症状を自覚しないこともありますが、病変がある程度大きくなると、視野の異常(みえない部分やみえにくい部分があること)に気づきます。また、血腫から出血すると蚊が飛んでみえるような症状(飛蚊症)が生じたりかすんでみえたりします。
VHL病における眼の病変のはじまりは網膜血管腫ですが、進行すると網膜剥離に至ることもあります。また、場合によっては血管腫のため血液が網膜に十分に供給されず、いわゆ血という状態に至ります。虚血に対応するため、血液を供給するために新生常にもろい血管が新しく生えてきて、その血管が眼の中で増えることによりな循環を保つことができなくなり、緑内障を合併する場合もあります。その際にはし視野が狭くなるばかりでなく、強いの痛みを自覚することもあります。さらに進行すると、最終的には眼球の形を維持する機能もなくなり、眼球ろうと呼ばれるした状態になる場合もあります。